「大分、風が強くなってきたね。どれ、表の様子を――」
「なりませんっ!」
「はぁ…部屋でじっとしているのは、性に合わないのだよ…」
「それでもなりません。野分が過ぎるまで、宗泰様を見張るようにとの命を受けているんです」
「通過と言っても一晩は掛かる。その間、お前が私の相手をしてくれるというのかい?」
「勿論です! 囲碁でも将棋でもお話でも、何でもお相手になりますよ!」
「…ふふっ、そうか。そういう事なら、部屋に居るのも悪くないかもね」
「えっ?」
「だって、お前を好きにしてもいいのだろう?」
「え、っと…その解釈は何か違う気が…」
「ははは、お前の気のせいだよ」
(笑顔に騙されかけてるけど、絶対に気のせいじゃないよね…)
「じゃあ、狐拳でもしようか」
「狐拳って…お座敷遊びのですか?」
「そうだよ。やり方は知ってる?」
「えぇ、一応は…」
「あ…でも普通に遊ぶのではつまらないから、敗者は勝者の命令をきくという条件を付けるのはどうだろう?」
「えぇ!?」
(それって、私…負けるしか…)
「ふふっ、面白くないかい?」
「そ、それは…」
「宗泰様。それで戯れるのも、その辺にしていただきましょうか」
「…葛城」
「はぁ、様子を見に来てみれば…」
「うっ…申し訳ありません」
「ふむ…彼女でなければ…葛城、お前が相手になってくれるのかい?」
「……えっ?」
「そう言うことだろう、葛城?」
「い、いえ…それとこれとでは話が別でして…」
「別? じゃあ、やはり彼女しか…」
「!!」
「…宗泰様、しばしお時間を宜しいでしょうか?」
「ふふっ、少しだけな」
「ありがとうございます…桂華!」
「はい!」
(至急、慎弥を連れて来い)
(ですが…)
(連れて来い…)
(わ、分かりました…)
(慎弥…すまん!!)